説話(アリと乞食)

一般に乞食という言葉は物乞いをする人を称する差別用語とされていますが、仏教では、「乞食(こつじき)」と言い僧侶が民家の戸口でお経を読み食を求めながら行脚する修行のことを指します。托鉢とも言い、受けた食材やお金は首に掛けた乞食袋(こつじきぶくろ)または頭陀袋(ずだぶくろ)と言う袋の中に納めます。

こんな話があります。『あるとき寺の裏玄関から「ごめんください!!」と呼ぶ声がし、行って見るとぼろ布を身に着けた一人の老人が立っていました。「何か食べ物をください」と乞うので、おにぎりを作り手渡しました。その場でおにぎりを食べた老人はポケットの中からお菓子の袋を出し玄関脇にしゃがみ、「草むらの虫たちよ、しばし空腹を満たせよ」と言い底に残っていた菓子の粉をアリの前に撒きました。そして、ありがとうと言って戸を閉め立ち去って行きました。不思議な気持ちになり慌てて戸を開け周りを見渡したのですが、もう姿はありませんでした。貧(ひん)しても貪(どん)ずることの無い老人の顔は柔和で仏様のように見え、貧しくとも余りあれば施しをする慈悲の心を忘れることなかれ…と戒められた気持ちになったのです。』

「己を忘れて他を利するは、慈悲の極みなり」。私欲に陥っていないかを戒める一言です。 

eお坊さんねっと 説話集より

参考:「天台宗」法話集より抜粋・編集

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